3月26日は本会議の最終日でした。
狛江市人権基本条例の賛成討論の途中、議場からのヤジと、議長による発言内容に対する注意があり、発言の中断を余儀なくされました。理由を確かめたところ「討論の内容が条例と直接関係がなく、内容が討論に相応しくない」ということでした。「差別による憎悪犯罪は、私たちが歴史の中で繰り返してきた」と述べた後のことでした。
条例に関連した内容だと訴えましたが、円滑な議会進行の為、3度にわたって議長権限で注意したと、翌日説明がありました。
討論の原稿はこちらです。
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2020.3.26 本会議
議案第10号「人権を尊重しみんなが生きやすい狛江をつくる基本条例」に賛成の立場で討論します。
はじめに、評価すべき点について述べたいと思います。
まず、本条例の前文に「このまちにも、自分の人権が侵害されたと感じていたり、生きづらさをかかえたりしている人がいます」と、狛江にある差別の存在を明記したことは、大いに評価される点だと思います。
「この条例は、差別被害があることを前提とする条例である」ということを明確にし「狛江市は現存する差別の撤廃に取り組んでいく」ということを示したわけです。お互いの顔が見える小さなまちゆえに、声を上げられないでいる「差別の被害者」や「差別を恐れている本人や家族」にとって、本条例制定の意味は非常に大きいものになります。
次に、条例第3条に「不当な差別的取り扱いの禁止」、第9条に「人権侵害による被害の救済」が盛り込まれたことは、大いに評価すべき点です。
「何人も」「あらゆる場所及び場面において」「いかなる理由の有無に関わらず」「差別や人権を侵害する行為をしてはならない」。この禁止条項に、決して法的な抜け穴を作ってしまうことがないよう、逐条解説又はガイドライン等で「差別とは」「いじめとは」など、しっかりと定義することが必要です。
3つめですが、本条例策定にあたり、1年間に9回にわたる「人権基本条例検討委員会」と、市民説明会を3回、シンポジュウムを2回、パブリックコメントの募集など、市民が参加する機会をしっかり設けてくださったことです。市民からの意見を反映する手続きが踏まれたことは、「市民参加と市民協働のまちづくり」を掲げる狛江市の「市民参加のあり方」について、一定程度、市民の信頼を得ることができたのではないかと思います。
以上の点を評価し、賛成の立場を取らせて頂くことに致しました。
松原市長は1年前の「人権条例検討委員会」の中で、委員の皆さんに向けて「狛江市を人権の尊重できる先進市としたい」「理念のみではなく、実効性のある条例をつくりたい」と訴えられました。本条例は市長の期待通り、理念のみではなく、実効性を持つ条例となり得たのでしょうか。
例えば、もし狛江市内で ヘイトスピーチデモが行われたら
同性カップルが 狛江市に行政サービスや福祉サービスを求めた場合、
新型コロナウィルス感染による差別や排除が拡大した場合など、
本条例をもって、これらの差別に対応し、解決につなげることができるでしょうか。
少し長くなりますが、今後 この条例を実効性のあるものにするために、意見を述べさせていただきます。
川崎市では、昨年12月「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」が全員一致で可決されました。その条例の前文には、以下の通り、川崎市の覚悟が述べられています。
川崎市は、日本国憲法 及び日本国が締結した 人権に関する諸条約の 理念を踏まえ、あらゆる 不当な差別の解消に向けて、一人ひとりの人間の 尊厳を最優先する人権施策を、平等と多様性を尊重し、着実に実施してきた。しかしながら、今なお 不当な差別は依然として存在し、本邦外出身者に対する 不当な差別言動、インターネットを利用した人権侵害などの人権課題も生じている。このような状況を踏まえ、市、市民及び 事業者が協力して、不当な差別の解消と人権課題の解決に向けて、人権尊重の理念の普及を より一層 推進していく必要がある。
ここに川崎市は、全ての市民が 不当な差別を受けることなく、個人として尊重され、生き生きと暮らすことができる 人権尊重のまちづくりを推進していくため、この条例を制定する。
この、本気で「地域から差別をなくしていこう」という思いが込められた前文に、私は心が震えました。
川崎市の条例は、国際人権基準に照らしての 差別禁止法の必要な要素を ほぼ満たす内容を実現しています。それは、
① 差別禁止条項
② 重大な差別には刑事規制をする制裁条項
③ 裁判によらない実効性ある被害救済手続き
④ 裁判によらない実効性ある被害救済を保障する専門的な第三者機関です。
狛江市の「人権を尊重しみんなが生きやすい狛江をつくる基本条例」が満たしているのは、①差別禁止条項のみです。
また、川崎市の条例では、実効性を持たせるために
① ヘイトスピーチを禁止するための罰則条項
② 「人権施策推進基本計画」の策定
③ 現存する不当な差別の解消のために、年齢にかかわらず
「人権教育」を行う ことが定められています。
狛江市の条例が満たしている項目は、残念ながらありません。
川崎市の条例は「ヘイトスピーチや差別は犯罪である」ということを明確に位置づけました。そして、差別に苦しめられているマイノリティを守ることを 条例で明確にしたのです。
人権は空気のようなものです。守られなければ、生きていくことはできません。しかし、失われてみないとその大切さはわからない。ヘイトスピーチや人種差別は、お隣の川崎市だけの問題でしょうか。どこの住民であろうと差別は許さない。そのためには、川崎市だけでなく、近隣の自治体、一つでも多くの自治体が「差別は許さない」「ヘイトスピーチを許さない」という姿勢を示すことが、地域から差別を無くしていくことにつながるのではないでしょうか。自治体のその姿勢が「条例」です。
東京都は昨年十月、人権尊重の理念の実現を目指すとして「人権条例」を制定しました。都道府県では初めて、ヘイトスピーチを条例で規制したわけです。そして、昨年五月の 練馬区での街宣活動と、六月に台東区で行われた デモ行進での参加者の言動を「ヘイトスピーチ」として認定しました。
先月、台東区で行われた超党派議員と市民による学習会に参加させていただきましたが、台東区ではヘイトスピーチによる地域の崩壊を防ぐために、今、必死になって、条例制定等の対応を検討しています。
狛江市では、総務文教委員会で企画財政部長が「被害者の救済については、重大な人権侵害となる前に必要な措置を講ずる」と発言されましたが、隣のまちでは既に深刻なヘイトスピーチや差別が起きているわけです。昨年は井の頭公園で ヘイトスピーチデモが計画され、ヘイトスピーチから地域や住民をどう守るのか、住民の不安は多摩地域にも広がっています。被害者が出てから条例を変えるのではなく、被害者を出さないため、加害者をださないための条例を整備するのが 自治体の責務だという市民の声が起こっています。
人権侵害はヘイトスピーチだけではありません。世田谷区では一昨年「多様性を認め合い男女共同参画と他文化共生を推進する条例」が制定されました。同性カップルや性的マイノリティの住民は、部屋探しの際に様々な困難があり、納税者であるにも関わらず、福祉や行政サービスが受けられない等、調査によって明らかになった差別を解消するための条例です。
この条例は「家族やパートナーとして認められたい」「医療や福祉で法律上の夫婦や家族と同等のサービスを受けたい」そんな、人として当たり前の権利を保障し、多様性を認め合い、自分らしく暮らせる地域社会を目指して制定されたのです。
お隣の世田谷区に 困っている住民がいるということは、狛江にも困っている方が存在するということです。狛江は良くも悪くも、顔が見えるまちゆえに、声があげにくい状況があるということです。
助けて欲しい人たちが、声を上げられないまちではなく「助けて」と言える地域に変えていくためにこそ 条例を制定するべきであり、近隣自治体での問題は狛江の問題でもあると、自治体も「我ごと」として「当事者性」を持つことが求められています。
世界が今、様々な決断を迫られているは、新型コロナウィルス感染拡大を どう防いでいくかという問題です。緊急事態や、見えない恐怖の中で、私たちは自分たちの中にある差別的な意識を、否応なしに突きつけられます。
世界中で、インターネットでも、暮らしの中でも、露骨なヘイトスピーチ(差別扇動)が行われるようになりました。ウィルスという見えない恐怖の中で、こうした差別の波は 重大なヘイトクライム(憎悪犯罪)へと繋がり、ウィルスの恐怖とは別の恐怖が 社会に 広がっていく可能性があります。
WHOのテドロス事務局長は、先月、早い段階で「敵はウィルスではなく差別だ。憎しみや差別ではなく連帯を」と世界に呼びかけました。差別は突然起こるのではありません。日頃の差別がきっかけとなり、虐殺やジェノサイドへとつながってきました。こうした差別による憎悪犯罪は、私たちが歴史の中で繰り返してきたことです。今こそ、私たちは自分自身の中にある、差別と向き合い、差別を許さない地域をつくることに全力を尽くさなくてはなりません。
なぜヘイトスピーチや差別が問題なのか、「憎悪のピラミッド」というわかりやすい図が アメリカの学校の授業で使われています。憎悪のピラミッドは、
議長)ちょっと、これはあくまでも条例に対しての、ついて言及した形で討論お願い致します。
はい、なぜヘイトスピーチや差別が問題なのかということ。まず、先入観による行為が私たちのベースにあり、その上に偏見による行為、そして差別的行為、暴力行為、そしてジェノサイドという形で差別が表面化していきます。このピラミッドの中で、大変恐ろしいことですが、私たちの暮らしの中にはすでに、先入観も偏見も差別も暴力もすでに存在しています。
やまゆり園での元職員による
議長)暫時休憩いたします。あのうすみません、あくまでも条例のことについての討論ということですので、あまりそこを踏み外さないような形で気をつけて討論を行なっていただきたいと注意させていただきます。はい、続行いたします。
はい。ただ、私たちの狛江のまちの隣のまちにも起こっていることであり、この小田急線の沿線でも起こったやまゆり園での元職員による命の選別、福島から避難してきた子どもたちへのいじめ、HIV患者への差別、
(栗山議員:議長変わっていません)
未だ解決していないハンセン病患者の隔離や差別、そして、多くの国々が行ってきた植民地政策。
議長)暫時休憩いたします。すみません、議長の注意をよく聞いていただきたいと思います。それによって・・・いただきたいと思いますので、
差別の重要性について説明させていただいています。
議長)重要性はわかりました。じゃなくて、今議題となっているのはこの条例についてです。そのことをよく認識をされてそれで討論を行っていただきたいと注意させていただきますので、よろしくお願いいたします。再開いたします。
今、なぜ差別が重要なのかをお話しさせていただいたわけですが、その上で条例策定の過程において「罰則ではなく、思いやりのある条例を」という発言が 幾度となく繰り返されました。厳しい罰を与えるのは狛江にはそぐわないからとのことでした。
しかし、「思いやり」では 被害者が守れないから 法律があるのです。これまで法律がなかったことで、数え切れないほどのストーカー被害者、レイプ被害者の「命と人権」が奪われてきました。「思いやり」が 本当に被害者を守るのか、それとも「差別は犯罪である」と条例で位置付けることが被害者を守るのか。狛江市の条例が 差別に苦しめられているマイノリティが 守られる条例であってほしいと 心から望みます。
最後に、「人権尊重基本条例推進会議」の委員長をはじめ、委員に関しては、差別に関する専門性が非常に重要であることを 申し述べたいと思います。なぜなら、「人権尊重基本条例推進会議」は、「何が差別であるのか」それを判断しなくてはならないからです。ここを申し上げるために先ほど説明をさせていただきました。長くなってすみません。
そのためには、委員長と委員は 差別解消について 必要な学識を有する学識経験者や、人権侵害や差別解消に関して行動している弁護士などとし、選出にあたっては、東京弁護士会、国際人権法学会などに「差別の解消について必要な学識を有する者」の推薦を依頼するなどして、「公正性」を確保してください。そして、差別被害者当事者性を有する人を必ず委員として委嘱してください。
本条例が本当に実効性を持つ条例となるよう、狛江市長におかれましては、責任を持って「人権尊重基本条例推進会議」の委員と委員長の「公正性の確保」をして頂き、「差別を禁止する基本計画の策定」を進めて頂きたいと思います。
本条例が本当に実効性を持つ条例となるよう、今後も議会の中で進捗状況を確認させて頂くことを約束し、本条例に賛成致します。