昨日の本会議において、根川公園へのポンプ場設置に伴う「旧玉翠園の石垣の現地保存」を求める二つの陳情(陳情第31号・第32号)の採決が行われました。
私は今回、この採決において「賛成」「反対」のどちらにも与せず、退出(棄権)という選択をしました。私の所属が総務文教委員会であるため、建設環境委員会での詳細な議論の場に直接加われなかったという背景もありますが、何よりも、この問題がどちらか一方を安易に選べる性質のものではないと考えたからです。
私が退出を選んだ理由は、主に以下の3点です。
①歴史的・文化的遺産としての議論の不足
陳情にある通り、旧玉翠園の石垣は明治期からの多摩川の歴史や、在日朝鮮人の方々との関わりなど、狛江の近現代史を物語る極めて貴重な歴史遺産です。しかし現在、この石垣は市の文化財指定を受けておらず、その学術的な価値や「本当に現地保存が不可能なのか」という詳細な調査・検討が十分になされているとは言えません。市としての歴史文化に対する明確な姿勢や議論がないまま、取り壊しを前提とした判断に賛成することはできませんでした。
②地域住民が直面する水害対策の緊急性
一方で、根川公園へのポンプ施設建設は、近年の激甚化する大雨から地域住民の生命と財産を守るための、一刻の猶予も許されない重要な水害対策工事です。「1日も早く工事を進めてほしい」という地域の方々の切実な要望を重く受け止めるからこそ、工事全体のストップや大幅な遅延に繋がりかねない選択にも、安易に賛成することはできませんでした。
③ 「二者択一」にすべきではない課題
今回の陳情への対応は、「防災か、歴史保存か」という単純な二者択一で片付けてよい問題ではないと考えます。地域の安全を最優先に確保しつつ、市の貴重な歴史の痕跡をどのように未来へ残せるか、柔軟な施工方法や移設の可能性も含めて、知恵を絞る時間と徹底的な対話が必要だったと思います。
どちらの立場にもそれぞれの思いと切実さがあります。現在の調査状況と限られた時間の中では、一方に重きを置く判断は極めて困難であると考え、苦渋の決断として「退出」を選びました。
採決としては否決という結果になりましたが、これで終わりではありません。
仮に計画通り工事が進む場合であっても、事前の発掘・調査の過程で柔軟な対応が取れるような部署間の連携や、物理的な記録にとどまらず歴史的背景を後世に伝えるための郷土資料・看板の充実など、できる限りの措置を講じるよう引き続き注視し、市に働きかけていきたいと思います。

